音楽クラコ座vol.10「呪術的思考〜マジカル・シンキング」 〜曲目紹介

投稿者: | 2021年11月22日

本公演ではのべ6曲が演奏されます。それぞれの曲について企画者の小櫻秀樹が簡単にご紹介します。
またリノスの歌はフルートがメインの曲。こちらはフルート奏者の丹下聡子も語ります。

A.ジョリヴェ《リノスの歌》アンサンブル版(fl, vln, vla, vc, hp)&ピアノ伴奏版(fl, pno)

フルート奏者にとって重要なレパートリーの中に『パリ音楽院のコンクール課題曲』があります。特に、その課題曲を作曲家に依頼するようになった19世紀末からは当時の音楽史的な背景も相まって色彩豊かなフルート作品が数多く世に出ました。
アンドレ・ジョリヴェ(1905 – 1974)の《リノスの歌》もその中の一曲で、1944年の課題曲です。ちなみにこの年の一等賞は20世紀を代表するフルート奏者ジャン・ピエール・ランパル(1922 – 2000)ほか4名に与えられています。この作品は、フルートとピアノのための曲としてしばしば演奏されますが、
同年に作曲者本人が書いたアンサンブル版(fl, vln, vla, vc, hp)もあります。その両方を演奏する本公演はかなり貴重な機会となるのは間違いないでしょう。(丹下聡子)

リーナス(リノス)は、ギリシャ神話に登場する評判の高い音楽家であり、雄弁の達人でした。彼は抒情的な歌の、最初の指導者とされています。今回は有名なフルート・ピアノのデュエット版だけではなく、アンサンブル版も演奏します。
この曲をピアノではなくハープと弦楽器で聴くことができるとは、「何と素晴らしいことか!この編成の方が数十倍も良く響くんじゃないか?」と思ってしまうでしょう。まさに貴重な機会、お聞き逃しなく!(小櫻秀樹)

T.エスケシュ《暗闇の歌》(1992, s-sax, pno)

パリ国立高等音楽院(CNSMDP)の教授であるクロード・ドゥラングルからの委嘱作品で、ダークな響きを持つ曲です。ポリモーダルかつポリリズミックな曲調が印象的です。(小櫻秀樹)

F.ヘーデリーン《AKT》(vn, va, vc)

スウェーデンの作曲家です。この曲では拍子が目まぐるしく変化します。3小節以上同じ拍子が保たれていないので、演奏者にとっては緊張の連続になります!そしてアクティブに動き回る音形も特徴的です。
スウェーデンの自然や光を彷彿とさせるサウンドから、彼が最先端の電子音楽で名を馳せた作曲家だということが頷けるでしょう。このような生楽器編成に彼の音楽経験がどのように反映されるのかが楽しみです!(小櫻秀樹)

C.ヴィヴィエ《Paramirabo》(fl, vln, vc, pno)

パラミラボというタイトルは何語でしょうか? もし知っていたりその意味が想像できる人がいたらすごい。
ヴィヴィエは一度も行ったことのない南米の小国、スリナム共和国の首都名をそのまま作品のタイトルにして、異国情緒に満ちた『音』を作りたかったようです。ところがスリナムの首都は『パラミラボ』ではなく、『パラマリボ(Paramaribo』でした……つまりこのタイトルは作曲者の完全な読み間違いから生まれたものなのです。
フルート、ヴァイオリン、チェロの3人は、ユニゾンでリズミカルに演奏し、それに対するピアノは対照的な音楽を奏でます。(小櫻秀樹)

山本裕之《境界》(a-sax, b-cl/委嘱初演)

音楽クラコ座は演奏家だけで成り立つアンサンブルではなく、主に企画や運営を行う作曲家が2名在籍しています。今回はそのうち山本裕之が、「呪術」をテーマにアルトサックスとバスクラリネットのための新曲を書き下ろしました。
山本は普段、精神世界やミステリアスな表現などをまったく行わないタイプの作曲家なので、どのようなものが出てくるか楽しみです!(小櫻秀樹)